プロンプトの基本構造
はじめに — このレッスンは何の役に立つ?
AI に仕事を頼むとき、「なんとなくお願いしたら、なんとなくズレた答えが返ってきた」という経験はありませんか。実はその多くは、AI の性能不足ではなく 頼み方 (プロンプト) が原因です。
💡 用語: プロンプト (prompt) AI に対する「指示文」「お願いの文章」のことです。検索窓に入れるキーワードではなく、人間の部下に仕事を依頼するときの「指示メモ」をイメージしてください。
このレッスンでは、職種や経験を問わず誰でも使える「伝わるプロンプトの型」を学びます。料理でいえば「レシピの書き方」を覚えるようなもので、一度型を覚えれば、メール作成・要約・企画立案など、あらゆる業務に応用できます。
学習目標
このレッスンを終えると、次のことができるようになります。
- 効果的なプロンプトの 4 要素 (役割・文脈・指示・出力形式) を説明できる
- 自分の業務シナリオで構造化プロンプトを 1 つ書ける
- 「書く → 試す → 評価 → 改善」サイクルで自分のプロンプトを改善できる
プロンプトの4要素
良いプロンプトには4つの要素があります。これは「新しく入った人に仕事を頼むとき、何を伝えれば過不足なく動いてもらえるか」と同じ発想です。
1. 役割 (Role) — AI にどの立場・専門性で答えてほしいか
2. 文脈 (Context) — 背景情報、前提、制約条件
3. 指示 (Task) — 具体的に何をやってほしいか
4. 出力形式 (Format) — 回答の形・長さ・トーン
それぞれを身近な例にすると、次のようになります。
| 要素 | 役割 | 人への依頼で言うと | プロンプトでの書き方の例 |
|---|---|---|---|
| 役割 (Role) | 立場・専門性を決める | 「ベテラン広報として」 | あなたは経験豊富な広報担当です |
| 文脈 (Context) | 背景・前提を共有する | 「新商品の発表が来週で」 | 来週、新商品Xを発表します。対象は20代女性です |
| 指示 (Task) | やることを明示する | 「告知文を作って」 | SNS告知文を1本書いてください |
| 出力形式 (Format) | 仕上がりの形を指定する | 「140字、絵文字あり」 | 140字以内、絵文字を2つ含めてください |
💡 Tip: 4要素すべてを毎回入れる必要はない 簡単な質問なら「指示」だけで十分です。ただし「思ったのと違う」と感じたら、足りない要素 (たいてい役割か文脈) を足すと改善します。迷ったらまず 文脈 を厚くしましょう。
Before / After 例
同じ「メールを書いて」でも、4要素を加えるだけで結果が大きく変わります。
Before (曖昧):
メールを書いてください。
これだと AI は「誰に? 何の? どんなトーンで?」が分からず、当たり障りのない一般的な文章しか返せません。
After (構造化):
あなたは経験豊富なビジネスライターです。(Role)
背景: 取引先の山田様にプロジェクト遅延を報告する必要があります。
遅延は 2 週間で、原因は外部API の仕様変更です。(Context)
詫び状のメールを書いてください。(Task)
形式: 件名・本文構成 (導入→原因→対策→お詫び)・200文字以内の本文 (Format)
After 版では、相手・事情・目的・仕上がりがすべて伝わっているため、すぐ使える具体的なメールが返ってきます。
システムプロンプト vs ユーザープロンプト
少し発展的な話ですが、AI への指示には「最初に1回決めておく設定」と「その都度のお願い」の2層があります。
| 種類 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| システムプロンプト | AI の基本動作を設定 | 「あなたはXXの専門家です」「日本語で答えてください」 |
| ユーザープロンプト | 個別のリクエスト | 「〜について教えてください」 |
💡 イメージ: アルバイトの「マニュアル」と「その日の指示」 システムプロンプト = 入店時に渡す店舗マニュアル (言葉づかい・基本ルール)。ユーザープロンプト = 「今日はレジをお願い」という個別の指示。マニュアルを一度しっかり作れば、毎回ゼロから説明しなくて済みます。
実務では、システムプロンプトで「ペルソナ + 制約」を固定し、ユーザープロンプトでタスクを渡すパターンが安定します。
📝 補足 ChatGPT や Claude のチャット画面では、システムプロンプトを「カスタム指示」や「プロジェクト設定」として裏側で設定する形になっていることが多いです。普段の入力欄に打ち込む文章は、ほとんどがユーザープロンプトにあたります。
プロンプト改善サイクル
一発で完璧なプロンプトを書ける必要はありません。大切なのは、結果を見て少しずつ直していくことです。
書く → 試す → 評価 → 改善
↑________________________↓
評価の観点
返ってきた答えを、次の4つの視点でチェックします。
- 精度: 要求した内容が含まれているか
- 形式: 指定した形式になっているか
- 長さ: 適切な長さか (短すぎ・長すぎ)
- トーン: ビジネス/カジュアルなど文脈に合っているか
よくある改善パターン
「困ったときの処方箋」として、症状別に対処法をまとめます。
| 問題 | 改善策 |
|---|---|
| 回答が長すぎる | 「200字以内」「箇条書き3つ以内」と明示 |
| 的外れな回答 | 文脈 (Context) を詳細に書く |
| 毎回結果が変わる | 「必ず〜してください」と強調、Temperature を下げる |
| ハルシネーション | 「不明な場合は「わかりません」と答えてください」と明示 |
💡 用語ミニ辞典
- Temperature (テンパラチャー): AI の「ばらつき度」を決める設定値。低くすると毎回似た答え、高くすると毎回違う発想が出ます。安定した業務文書には低め、アイデア出しには高めが向きます。
- ハルシネーション (hallucination): AI が事実でない内容を、もっともらしく言い切ってしまう現象。「幻覚」と訳されます。重要な数字や固有名詞は必ず人間が裏取りしましょう。
✅ やってみよう (1分演習) あなたの普段の業務から1つ作業を選び、4要素を埋めてプロンプトを書いてみてください。 例: 「議事録の要約」「クレーム返信文の下書き」「会議アジェンダ作成」など。
まとめ
- 良いプロンプトは「役割・文脈・指示・出力形式」の4要素で構成される
- 4要素はすべて必須ではないが、ズレたらまず 文脈 を厚くする
- システムプロンプトでペルソナと制約を固定し、ユーザープロンプトでタスクを渡すと安定する
- 一発で完璧を狙わず「書く → 試す → 評価 → 改善」のサイクルを繰り返す
- 重要な数字や固有名詞はハルシネーションを疑い、人間が必ず確認する
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